白内障手術では白内障を摘出しただけでは見えるようはなりません。
眼の中に眼内レンズを挿入(移植)して初めて普通に見えるようになります。
当院では現在シリコン製またはアクリル製眼内レンズを使っています。
シリコンレンズにも何種類かありますが、当院で使用しているのは紫外線吸収レンズで2.5mmという小さな創口から挿入することができるものです。
下記のプラスチック製の固いレンズより後に開発された軟らかいレンズです。
直径は5.5mmありますが、軟らかくて折り畳むことができるため、2.5mmの小さい創口から挿入することができます。
そのため傷口を糸で縫わなくてすみますし、手術の時に麻酔も注射をせずに眼薬だけの麻酔(点眼麻酔)で大丈夫です。
また傷口が小さいために手術後の回復が早く、すぐに見えるようになりますし、乱視も起こりにくいと言う特徴もあります。
シリコン製と同じく軟いタイプの現在主流のレンズです。
当院ではこのアクリル製の乱視付きレンズ・多焦点レンズを使っています。
手術方法等はシリコン製眼内レンズとほとんど一緒です。
レンズに乱視が入っているために、術前の乱視を矯正できるという特徴を持っています。
2009年に認可されて以来、当院では、乱視が強い人にはこの乱視付き眼内レンズを積極的に使っています。
手術後に裸眼ではっきり見えるようになり、喜ばれています。
当院では1995年頃から使用しています。
これまでの眼内レンズが単焦点レンズで老眼を治すことができなかったのに対し、このレンズでは老眼鏡を使わなくても手元が見えるようになります。
つまり手術後は眼鏡なしで生活できるようになります。
大変理想的なレンズなのですが、緑内障や眼底出血のある人には向きません。
また少しコントラストが悪いという欠点もあります。
このレンズは保険適応外なのですが、当院は先進医療施設として認可されているため、手術以外は保険がききます。
手術日の費用として 36万円前後(片眼)かかります。
一番最初に開発されて使われた固いレンズです。
5-7mmと若干大きな創口が必要となるため、最後に傷口を糸で縫う必要があります。
上記のシリコンレンズが開発される前は当院でも使っていましたが、現在はほとんど使われていません。
上記のすべては後房レンズですが、その他として前房レンズが1種類認可されてます。
この前房レンズは、以前に白内障手術を受けていて、眼内レンズが移植されていない方に使用されていましたが、現在ではほとんど使われていません。
最初に眼内レンズを移植したのはイギリスのRidleyという眼科医で、1949年のことでした。
それ以前の白内障手術というのは、濁ったレンズ(つまり白内障)を取り除くだけの手術でした。
Ridleyは手術の上手な名医で、彼の手術を見に来ていた学生に、「レンズをとった後に、どうして代わりのレンズを入れないのですか」と、訊ねられたことがきっかけとなったそうです。
当時、眼内レンズの材質として選ばれたのは、堅いプラスチックでした。
これは第二次世界大戦中に戦闘機のプラスチックの風防が割れて眼の中に入っても、炎症も起こさずほとんど害がなかったため、眼内レンズの素材として選ばれたのです。
このRidleyが開発した眼内レンズは虹彩(茶眼)の後ろに挿入する後房レンズで現在の眼内レンズと構造や挿入位置が大変に似ているものでした。
しかし、現在ほど手術器具や顕微鏡などが発達していなかったため、移植するのがとても難しかったそうです。
そこで、もっと手術しやすいレンズとして虹彩の前に移植する前房レンズや、バネ状のループで虹彩を挟み込んで止める虹彩クリップレンズなどが開発されました。
しかし一部合併症があるため、現在では特別な場合をのぞいてほとんど使われていません。
日本でも認可を受けている眼内レンズのほとんどは後房レンズで、他に前房レンズが1種類認可されているのみです。
現在の多焦点レンズはコントラストが若干落ちる等、まだ改良の余地があります。
新しく乱視付き多焦点レンズも出ましたが、さらに開発が進むと思います。
乱視付きレンズも、現在のレンズは軸を合わせるのに時間がかかります。
今後はもっと簡単に挿入できる乱視付きレンズが出てくると思います。
また、今はレンズを挿入するのに2.5mmの創口が必要ですが、もっと小さい創口から挿入できるレンズが開発されるかも知れません。
わからない事、お知りになりたいことがありましたらお気軽におたずねください。